2024.11.05
こんにちは、大阪の阪急茨木市駅前のみやの矯正・小児歯科クリニックです。
今回は未就学児の受け口治療についてのお話です。
未就学児は永久歯が生えてきておらず、いわゆる乳歯列期と呼ばれる状態です。
基本的には乳歯列期に矯正治療を開始することは一般的ではありません。しかし、乳歯列期の歯並びの異常をそのまま放っておくと将来的に骨格的な「ズレ」や「ゆがみ」を引き起こすような咬み合わせに関しては、乳歯列期から治療を開始します。
「受け口」つまり「反対咬合」と呼ばれる状態は、乳歯列期から治療が必要な歯並びとなります。
下顎が骨格的に大きい場合(多くの場合遺伝的な影響を受けやすい)、上顎が小さい場合、上下の顎の位置のバランスの問題、歯の角度が悪く受け口でしか噛めない場合など様々な原因が複合的に関係しています。
原因が様々であるため、治療を行う装置の種類も様々です。
そのため「受け口にはこの装置!」といったような万能薬は存在しません。
下顎の骨が成長しすぎて前に出ている場合は、「チンキャップ」と呼ばれる顎の矯正器具が以前は主に使用されていました。下顎の成長を抑制し、下顎が後ろに下がるようにする装置です。しかしこの装置は思ったような良い結果が出ないことも長年の研究からもわかってきています。
2020年の日本矯正歯科学会の成長期の骨格性下顎前突における治療ガイドラインにおいても「チンキャップ」治療は推奨されないとなっています。
ですので下顎が大きい場合の骨格性反対咬合の場合は、非常に治療が難しく将来的に外科矯正治療が必要となる可能性が高いことも、乳歯列の時点でお伝えしないといけないこともあります。
受け口の原因が骨格的な問題の場合、ムーシールドやパナシールド、プレオルソといったマウスピースの装置、いわゆる筋機能訓練装置と呼ばれる装置はあまり効果は期待できません。一時的にかみ合わせが改善したようにみえても、永久歯の生え変わりや成長によって必ず後戻りを起こします。そういった患者さんは治療を行うことに意味がないわけではなく、なんのためにどのような装置を使用するのかを考え、長期的な治療計画の中で対応していく必要があります。そのため、受け口の方は成長が終了するまで治療や治療終了後も経過観察が必要となり、非常に期間が長くなるというデメリットがあります。
ムーシールド・パナシールド・プレオルソ・T4Kトレーナー等の装置を総称して口腔筋機能訓練装置と呼びいわゆるマウスピースの装置です。
上記以外にも様々な種類の装置があります。
マウスピースで治療しているのに歯並びが改善しないパターンとして
①そもそも口にマウスピースを入れ続けられない
②使用方法が間違っている
③マウスピースでは治らない歯並びである
が挙げられます。
①や②の場合は、きちんとした舌の位置にして使用し、慣れてきてできるようになれば改善することも多いですが、ずっとうまく使用できなくて結局は治らないということもあります。
③の場合は、いくらマウスピースを使用しても治ることはありませんので違う装置や治療方法を行う必要があります。
上記のマウスピースは既製品であり、歯科医院が業者から購入し、それを患者様に渡すだけですので、非常に手軽に始められる矯正治療です。
上記のようなマウスピースを使用しているのに治らない患者様や、ここまでは治ったけどこれ以上は無理だからと矯正専門医院へと行ってくださいと言われてやってくる患者様が非常に多くなっています。
大事なのは、何のためにどのタイミングで、どのような装置を使うべきなのかということであり、それを患者様と共有し、ようやく治療に入ります。矯正治療は装置の協力性が非常に大切であるため、使用できない=治らないというのはある程度仕方ないこともあります。一方で固定式の装置を使用したりなどの工夫で問題なく改善することもあります。
どちらの症例も骨格的な問題がある方です。
マウスピース矯正でもひとまずは改善することがありますが、長期的には効果がないタイプです。
骨格的な問題が大きい場合は、どういった治療を行っても、成長とともに歯並びの問題が出てきてしまいます。
治療開始前にきちんと現状を把握し、長期的な展望や治療計画をきちんとお伝えしたうえで、治療を開始する必要があります。
片側性の反対咬合(噛み合わせが左右非対称の反対咬合)の場合も、マウスピース矯正では改善しにくい歯並びです。
早期に改善が必要であるのにも関わらず、生え変わりまで経過観察しましょうと言われることも多いため注意が必要です。
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院長宮野 純一Junichi Miyano