2025.01.15
こんにちは、大阪の阪急茨木市駅前のみやの矯正・小児歯科クリニックです。
今回は、上手な矯正歯科の見分け方というテーマについてお話したいと思います。
結論を言うと、患者さんがきちんと見分けるのはかなり難しいと思います。
以前であれば矯正治療前後の写真など症例がたくさんホームページに掲載されていれば矯正を専門としており、上手な矯正歯科と判断できていたと思います。
時代が変わりその症例写真が「上手な矯正歯科」である証拠ではなくなってきているように感じます。
矯正治療前後の症例写真では上手な矯正歯科と判断できない理由は「しなくても良い矯正治療を行っている」場合が挙げられます。
100名の矯正相談を受けると、10名くらいは歯並びの問題が軽度であり場合によっては矯正治療の必要のない状態のこともあります。一見スペースがないように見えたり一時的に歯並びが悪くみえているだけで、生え変わりとともに勝手に治っていくことも多いです。
本来何もしなくても治るのに矯正治療を介入したことにより改善しましたと、症例写真を載せられるとさも矯正治療がすごかったかのように錯覚してしまうのです。
上記症例は、むし歯治療のみを行い定期検診にて経過観察していた症例です。
噛み合わせの問題も少なく、小児期からの矯正治療の介入は必要なく「この時期の矯正治療は過剰な医療」と判断していました。
もちろん自然に改善しきらないこともありますが、この症例のように自然ときれいな歯並びになることも多いです。
自宅での口腔トレーニングや夜間のマウスピースの使用なども一切しておりません。
矯正治療を何かちょっとしても悪くなることはないですし、ほっておいても治るのですからこのような症例を「矯正治療の成果」としてSNSやホームページに載せる先生が上手なわけがないのです。むしろ矯正治療をしなくて良いと判断する先生の方が「上手な矯正歯科」であると思いませんか?
SNSにおいて矯正治療をしたことのない先生向けのセミナーがさかんに行われています。
「矯正を始めて間もないドクターがたった1年で150症例を達成した経営戦略を公開」
「インビザラインの成約率が68%以上(小児はほぼ100%)になるカウンセリング手法を完全公開」
このような広告を見て矯正治療を取り入れ始める先生も出て気ました。
一昔前であれば、矯正治療はかなり専門性の高い分野だったので矯正専門の歯科医院でしか受けられない特殊な治療であったのが矯正治療を専門としない一般歯科でも矯正治療が受けられる時代となったというようにも解釈できますが、みなさんはどう思われますか?
当院の矯正治療はホームページにも記載していますが、年間新規で100名までとしています。
矯正治療の患者数が増えすぎると治療のクオリティや医療水準をキープできなくなるという判断からです。
当院は、子供の矯正治療専門の歯科医院であり、歯並び管理を希望されるお子様のみ初診受付を行っています。
大人の方のむし歯治療やセラミック治療、インプラント治療、親知らずの抜歯も行っていませんし、大人の方の矯正治療もほとんどしていません。(平日午前中に来院できる方のみ対応しています)
当院のような矯正のみを行う専門歯科ですら1年の新規矯正患者数は100名が限界であるのに、このようなセミナーを受けると矯正治療をしたこともない先生でも1年間に150名もの患者数を診ることができるようになるということです。しかも矯正治療をしたことがない歯科医院ではおそらくむし歯治療の患者がひっきりなしにくる状態だと思いますし、その中で150名を診れるというのが私には難しいなと感じます。
今は受験シーズン真っ只中ですが、勉強の時に参考書はもちろん使用しますよね?
参考書の使い方は人それぞれだと思いますが、教育現場の先生たちからはいろいろな参考書を沢山使用するのではなく、自分にあった参考書をしっかりこなすほうが大事というのはある程度決まった定説ではないでしょうか?
私は矯正治療の患者数=参考書の数のように感じています。
矯正治療の症例数が年間200件だから矯正治療経験豊富です!とアピールされているのをみると、私はたくさんの参考書をもっているので勉強できます!と主張しているのと同じと思ってしまいます。
先ほども記載しましたが、当院での矯正治療の年間新規件数は100名までと制限しています。
当院は矯正専門医院で矯正治療しか行っていませんが、それでも院長自身が年間100冊の参考書が限界ですよと言っているのと同じ気持ちです。
「参考書が多い≠勉強ができる」とはならないように
「症例数が多い=矯正治療が上手」とはならないのです。
私の高校3年間のクラスメイトに東京大学の医学部(理科Ⅲ類)に現役合格をした友人がいます。
他にも東大や京大に進学するクラスメイトは沢山いましたが、情報処理能力や学習能力が異常に高く自分の理解を超えた能力を持った人がこの世の中にいるのだなと身近に感じたのは人生でその友人一人だけです。
ですので特殊な能力を持っている優秀な先生であれば、私の理解を超える症例数もきちんとこなせるのかもしれません。
①~④のようなことから、ホームページやSNSに掲載されている症例数が「矯正治療が上手」という証明にならないことはご理解いただけたでしょうか?
ただし、症例が掲載されている=治療経験があるということではあると思いますから、あくまでも「矯正治療が上手」かどうかが判断できないという意味です。
最初に記載した通り、患者さんが「上手な矯正歯科」をきちんと見分けるのはかなり難しいと思います。
まず「上手」というのが様々な解釈ができますし、人によって上手の定義が異なると思いますので、〇〇であれば上手!と簡単に判断できるはずもありません。
そのような中でも患者さんは「上手な矯正歯科」を判断したいと思いますので、どのような所を見た方が良いかお伝えできたらと思います。
歯科医院がきちんと掃除されているかと矯正治療が上手かどうか関係ないと思われるかもしれません。
これは院長の性格を判断するポイントと言ってもいいかと思います。
小さな歯科医院は基本的には院長の独裁政治であることが多いです。
院長がどのような指示を出しているかどうかで、歯科医院の在り方に大きく関わってきます。
矯正治療は見た目も大切な要因です。
きれいにみえるよう治せるのが上手な矯正歯科です。
ですので、人からどう見られるか、人からきれいに見られるようにしようという意識が非常に大切な資質だと思います。
院内がいつもきれいな歯科医院であるほうが、院長の矯正治療が上手な資質があると判断できるでしょう。
これも院長の性格を判断するポイントかと思います。
矯正治療前後や矯正治療中の写真は状態の確認や記録として非常に重要であるため必ず採得します。
美しくない写真を平気でホームページやSNSに掲載されている場合があります。
症例数が少なく、その写真しかないのであれば載せざるを得ないということもあるかとは思いますが、たくさん症例写真が掲載されているにも関わらずすべてが美しくない写真の場合、もうその歯科医院ではその写真のクオリティが標準化されてしまっているということになります。
では美しくない写真とはどのような写真なのかというと、日本矯正歯科学会のホームページにもしっかりと掲載されています。
一部引用した写真です。(引用元日本矯正歯科学会HP)
美しい、美しくないというのが主観ではなく、このような写真は望ましくないというのがきちんと明文化されています。
正面から撮影できていない、唇がかぶっている、奥歯まできちんと写っていないというようなことはかなり注意しないと比較的起こりやすいのです。
写真はほとんどの場合歯科衛生士が撮影すると思いますので、きちんと院長が確認してこのような写真はだめだよ、美しくないよと指導できているかそうでないかが写真をみただけでわかります。
また写真の傾きや縮尺に関しては、撮影した写真をそのまま載せるのではなくトリミングやレベル補正にて調整したり、傾きを修正するだけで見栄えが非常に変わります。下記の調整前と後の同じ写真で見やすさ(美しさ)がかなり変わるのがわかりますでしょうか。
撮影時のミスで調整できない問題も多いため、撮影時に気を付けるべきポイントも多いですが、このように後の調整で修正できることもあります。
発売されている本や雑誌の写真部分などもすべて生データが載っているわけではなく、必ず読者がみやすいように調整が行われています。
歯医者であれば、患者様がみやすいように、わかりやすいように、という配慮なわけです。
ホームページやSNSに症例写真として生データを載せてしまう院長は、基本的にはそのような細かな問題を気にしない先生なんだろうなと思います。
矯正治療は患者すらわからない細かな問題をどこまで修正するかという仕事なので、細かなところを気にするというのが矯正治療が上手な資質であると思います。
私自身の体験談となりますが1歳の子供を小児科に連れて行った際に、角膜の形が気になるから大阪大学など大きな病院の眼科で診てもらってくださいと言われたことがあります。
幸いにも何も問題がありませんでした。
小児科なんだから1歳の子供の眼をきちんと診察できない小児科の先生は上手でない先生なのでしょうか?
そんなことは絶対にありません。
「万が一があったら困るから」、「小児科で沢山の子供を診る中でこの子の眼には何か違和感がある」、「眼科の専門の先生に判断してもらったほうが良い」
このようにきちんと自分のできないことをわかっており、きちんと見極められる先生が本当の「上手な先生」だと思います。
歯科医療も多岐にわたります。
私自身親知らずの抜歯はほとんど経験がありません。
大人の入れ歯やインプラントもほとんど経験がありません。
矯正治療、小児治療の臨床と、矯正治療の論文を書いたりなどの学術的な勉強を一つの分野できちんと行うだけで膨大な時間と年数を要します。
ですのでインプラントも歯周病も、親知らずの抜歯などの口腔外科処置も、矯正治療もすべてが上手に高いレベルでできるというのが現実的ではないと思っています。
でもある歯科医院にいくと、「うちでなんでもできますよ」と自信満々に言ってくれる先生もいらっしゃると思います。
そのような先生は、
本当にすべての治療を上手にこなせる優秀な先生か、
先生の言う「できる」というレベルが客観的な歯科医師から見るとそれは「できていない」といいうレベルだということを判断できていない先生か、
もしくは自分では「上手にできない」ことをわかっていながら、正義感や責任感から「できる」と言っている先生かになるかと思います。
高校の先生もおそらくどの教科でもある程度は勉強してきていると思いますが、自分の専門の教科は「できる」と言われると思いますし、その他の教科は「他の先生に聞いて」と言ってくれますよね。
自信をもって提供できる専門分野は「できる」
それ以外の分野は「できない」
ときちんと伝えてくれる先生が「上手な先生」だと思っています。
先日、SNSかネット記事でみた文言です。
乱立する美容外科に対して警鐘を促すような内容だったように思いますが、その中で
「美容外科に必要なスキルは医学的スキルではなくホスト的スキル」
と言われていました。
つまり、患者を治すために必要な医学的スキルよりも
自分自身のパーソナルな部分を気に入ってもらい、来院してもらうホスト的スキルつまり集客のためのスキル
がメインになってきてしまっていると。
SNSでキラキラした先生が話されているのをみると魅力的に感じますよね。
もちろんホスト的な集客スキルも大事だと思いますし、人から好かれるのは必要な要素だと思います。
しかし、その根底には医学的スキルが必ず必要ですし、それは昨今の矯正治療にまつわるSNSでの扱いをみていても同じように思います。
最終的にどの先生に診てもらうかは立地や費用などももちろん大きな問題ですが、集客スキルだけではなく、医学的スキルや矯正治療が上手な先生に診てもらえるよう比較検討されることをお勧めします。
お子さんの生え変わりや歯並びのことなど、ご不安な点や、気になる点があれば一度ご相談ください。
みやの矯正・小児歯科クリニック
大阪府茨木市別院町4-15 別院町・掛谷第6ビル
みやの矯正・小児歯科クリニック(大阪・茨木)
院長宮野 純一Junichi Miyano