2024.11.05
こんにちは、大阪の阪急茨木市駅前のみやの矯正・小児歯科クリニックです。
今回は犬歯が生えてこないトラブルである上顎犬歯の埋伏に関する治療例についてまとめています。
上顎犬歯の埋伏に関しては、以前に書いたこちらのブログも参照してください。
前回のブログでは、埋伏の診断のポイント・レントゲンの見るべきポイント・注意点として
①犬歯の向きや位置が正常の位置に比べて少し異なる場所に位置する
②犬歯の見え方が左右で異なる
③犬歯が本来の場所とは異なる場所や向きに位置している
④犬歯が側切歯(前から2番目の前歯)の根と近接している
⑤犬歯が側切歯の根を吸収している
が挙げられることについて説明しています。
今回は埋伏の治療例についてお話していきます。
左上犬歯が埋伏しています。
先ほどの診断のポイントと照らし合わせてみても、
②犬歯の見え方が左右で異なる
③犬歯が本来の場所とは異なる場所や向きに位置している
④犬歯が側切歯(前から2番目の前歯)の根との近接している
が該当します。
CT写真をとると、犬歯の周りに歯嚢とよばれる空洞が広がっていることがわかります。
口腔外科にて処置していただいた際の病理検査では含歯性嚢胞と診断されました。
このまま置いておいても自然萌出する可能性は低く、含歯性嚢胞が大きく成長してしまうことで手前の歯を吸収してしまったり、手前の歯を変な位置へ位置変化させてしまうことがあります。
治療方法としては、まず含歯性嚢胞の摘出手術と乳歯犬歯の抜歯が必要となります。
上記の外科処置だけで自然と正しい位置に萌出することもありますが、犬歯の位置関係や年齢などから自然萌出の可能性は低いと判断し、牽引治療を行うこととなりました。
犬歯をある程度正しい位置まで牽引するのが目的となります。
下記写真のように犬歯がねじれていがんでしまっていますが、この段階の治療としてはこの状態に達するのが治療目標となります。
犬歯のねじれ以外の問題である、出っ歯、かみ合わせが深い(過蓋咬合)、12歳臼歯の問題なども一緒に改善していきます。
一般的なブラケットとワイヤーと呼ばれる矯正治療のステージとなります。
矯正後は保定装置を使用し、きれいになった歯並びを維持する期間となります。
右上犬歯が埋伏しています。
先ほどの診断のポイントと照らし合わせてみても、
②犬歯の見え方が左右で異なる
③犬歯が本来の場所とは異なる場所や向きに位置している
が該当します。
先ほどの含歯性嚢胞とは異なり、CTを撮るまでもなく、パノラマレントゲン写真から何か異物がみえるのがわかるかと思います。歯牙腫と呼ばれる歯牙様の矮小な構造物の集合体によって犬歯の萌出が阻害されています。
もう少し発見が早く、犬歯の根が未完成の場合は歯牙腫のみを摘出して経過観察をすることもあります。
今回の症例のように年齢が高く、埋伏犬歯の根が完成している場合には歯牙腫の摘出のみでは埋伏犬歯の自然な萌出は期待できないため、歯牙腫の摘出と同時に牽引用のボタンの装着を行い、犬歯の牽引を開始しました。
埋伏犬歯の牽引を行うかどうかの判断に「根の完成度」というのは非常に重要な要因となります。
犬歯の位置も深く、移動量が多かったため牽引のみに1年半近くかかりました。
犬歯の牽引が終了した段階でようやく他の歯と同様にきれいに排列するステージに移行します。
右上犬歯が埋伏しています。
先ほどの診断のポイントと照らし合わせてみても、
①犬歯の向きや位置が正常の位置に比べて少し異なる場所に位置する
②犬歯の見え方が左右で異なる
③犬歯が本来の場所とは異なる場所や向きに位置している
が該当します。
先ほどの二つの症例のように、含歯性嚢胞や歯牙腫といった萌出を阻害する明確な要因があるわけではありません。
埋伏した犬歯の歯胚の位置異常があるわけではない場合、写真のような犬歯の向きの異常を認めても時間経過とともに方向がかわり、自然にきちんと萌出することも少なくはありません。
まずは注意をしながら経過観察が第一選択となります。
時間が経過すると根が形成されてきます。根の形成のタイミングで歯が萌出してくるためそのタイミングで位置の変化が認められない場合はその後の自然な萌出が期待できないことが多いです。また上顎洞や鼻腔の側壁との位置関係から歯根が曲がってしまうと後に牽引することも困難となってしまいます。
埋伏犬歯の牽引手術を行う場合、9歳から10歳までにはその判断が必要となります。
右下の写真は上顎埋伏犬歯の開窓術とボタンの装着を行っている写真となります。
右上犬歯が埋伏しています。
先ほどの診断のポイントと照らし合わせてみても、
①犬歯の向きや位置が正常の位置に比べて少し異なる場所に位置する
②犬歯の見え方が左右で異なる
③犬歯が本来の場所とは異なる場所や向きに位置している
④側切歯(2番目の歯)ではないですが4番目の小臼歯の根と近接している
が該当します。
最初の二つの症例のように、含歯性嚢胞や歯牙腫といった萌出を阻害する明確な要因があるわけではありません。
元々の歯胚の位置が悪く、4番目の歯(小臼歯)と犬歯の位置が入れ替わるように位置してしまっています。
先ほどの埋伏犬歯の向きの異常とは異なり、歯胚位置異常の場合は自然に解消することが困難な場合が多いです。
ただすぐに手術を行うわけではなく、入れ替わってしまっている歯の位置によって対応が大きく変わります。
この写真の症例ではスペース不足への治療を行っている間に自然に小臼歯(4番目の歯)が萌出したためようやく埋伏犬歯の牽引が可能となりました。牽引のための装置を装着する手術を行ってもらい黄色矢印の方向へ牽引していきます。写真は犬歯の牽引後正しい位置へ動いた後の状態となります。
牽引期間は1年くらいはかかることが多いです。
犬歯の歯胚の位置異常や側切歯(手前の歯)との近接を認めた場合、8歳から10歳くらいに相談がある場合には犬歯の埋伏や根吸収など悪影響がないようにその段階で介入することが多いです。
その時期を過ぎ、中学生頃になって初めて相談に来られる場合、元々犬歯が埋伏傾向にあったもののたまたまうまく生えてくれているケースがあります。
その場合乳犬歯が残存していたり(青矢印)、上の2番目の歯が犬歯から逃げるように中側へ移動してくれていること多いです。
このように自然に大きな問題を回避する可能性もあるため、犬歯の牽引治療をどのタイミングで行うかは非常に大きな問題となります。
犬歯の埋伏がうまい具合に回避され問題が大きくない場合は、スペース不足の解消や乳犬歯の抜歯を行いワイヤー矯正にて犬歯をきれいに排列することが可能です。
犬歯が埋伏している場合、非常に治療が複雑となり長期化することが多いです。
犬歯埋伏に対する単独の問題だけであることも少なく、出っ歯や受け口、スペース不足などの歯並びの問題によっても対応が大きく変わってきます。
犬歯の埋伏に関しては、インビザラインに代表されるマウスピース矯正では改善できないことが多いです。(犬歯を牽引してきたあと、排列するステージになればインビザライン治療も可能になることはあります。)
先生によっても治療方法や考え方も大きく異なるため、患者様が納得し信頼できる先生の元で治療を受けていただけたらと思います。
お子さんの生え変わりや歯並びのことなど、ご不安な点や、気になる点があれば一度ご相談ください。
みやの矯正・小児歯科クリニック
大阪府茨木市別院町4-15 別院町・掛谷第6ビル
みやの矯正・小児歯科クリニック(大阪・茨木)
院長宮野 純一Junichi Miyano