2024.11.05
こんにちは、大阪の阪急茨木市駅前のみやの矯正・小児歯科クリニックです。
昨今インビザラインが急速に普及している影響もあり、子供用のインビザラインであるインビザラインファーストに関する質問を多く受けるので、今回は当院がインビザラインファーストを勧めない理由についてお話したいと思います。
透明で薄いマウスピースを1日に20時間~22時間以上装着し、マウスピースを1週間毎など定期的に交換していく事で歯を並べていくのは成人のインビザラインと同様です。
歯列の拡大を行いながら1本1本排列することができ、成長期であるため顎の成長を利用しながら矯正治療を行うことが特徴の装置です。
小児矯正で使用するインビザラインファーストは、大人の矯正治療に使用するインビザラインインビザラインと同じく
・取り外しが可能
・毎日つけるだけで簡単
・透明で他の人からわかりません
・口腔内カメラでスキャンするので粘土の型取りも不必要
・痛みもなく負担が少ない
・2,3か月に1回だけの通院で大丈夫
・世界中から集められた様ビッグデータをもとに、患者それぞれに最良なオーダーメイドのマウスピースを作製するため安心
といったようなメリットが謳われています。
歯科医師向けのセミナーも非常に多く、インビザラインファーストを取り入れましょうと盛んに広告がなされています。
その影響もあり、今まで矯正治療に携わってなかった歯科医師がインビザラインファーストを取り入れているため患者さんとしてはインビザラインファーストを勧められやすいのです。
インビザラインファーストはアライン社が提供する矯正システムです。2025年も一部商品に値上げがあるようですが、マウスピースをいくつも作製する必要があるため非常にコストが高くなります。アライン社には年間の治療症例数によってプロバイダーとよばれるランク分けがなされます。このランク分けが上位になればなるほど発注コストが安くなるシステムです。当院のような小規模の歯医者では症例数が多くないため、最下層のランク分けとなってしまい一人一人の治療コストがかかりすぎてしまいます。ですので、やるのであればできるだけ数をこなし契約し製作コストを下げないと利益率が悪くなってしまうため、インビザラインファーストを取り扱う歯科医院ではどんどん新規の患者を取り入れていかなければならないのです。
インビザラインファーストは治療の根幹となるものがパソコンでの治療計画の作製となります。
従来の矯正治療であれば実際に口腔内に装着したり、口腔内で作業が必要となるため自分が手を動かさないといけませんでした。
それがインビザラインファーストではPCで治療計画をきちんと設定し、発注さえすればマウスピースを渡したり使い方を説明するのは矯正医である必要はなく、矯正医が出勤する必要すらないのです。
複数の歯科医院で矯正治療を行う非常勤矯正医にとってインビザラインファーストは、非常に使いやすく便利なシステムなのです。
インビザラインファーストは治療期間が1年半と非常に短期間に設定されています。
乳歯と永久歯の生え変わりが終了するまでの長期的な管理が必要な小児矯正にとって、この治療期間の問題がかなりネックになります。
インビザラインファーストの治療自体に問題があるわけではなく、1年半を超えて治療が必要な場合は再度高額な治療費がかかってしまうという費用面での問題が最も大きいです。
ですので多くの歯科医院ではインビザラインファーストの治療期間である1年半が終えた後は、結局その他の矯正装置を使用していることが多いのです。
インビザラインファーストは取り外しが自分でできるので、しっかり決められた時間の装着が必要となります。
またよくあるのが、マウスピースの順番を間違えたり、古いマウスピースに戻ってしまっていたりというトラブルがあります。
そういったことがないように保護者の管理が重要となります。
先述したインビザラインファーストの弱点が、当院がインビザラインファーストを勧めないそのまま理由となります。
私も小さい子を育てる親としては、勉強や食事、習い事の練習や宿題、色々と日常生活で管理しないといけないことが多いのに、さらにマウスピースの管理まで増えるのは非常に負担に感じます。
そういった面でも取り外しができない装置の方がメリットに感じます。
また生え変わりのある小児の場合、1年半という短期間で決着がつくことは少ないので、治療期間という面でも選択しにくくなります。
下記の症例も治療開始のベストな時期に治療を開始しました。(インビザラインファーストではありません)
まだ経過観察中ですが下の乳歯も生え変わっておらず12歳臼歯も生えてきていません。
適切な時期に治療を開始すると管理期間が4年以上かかることも多く、その間に適宜必要な装置や治療を行うことで2期治療の必要がなくなることも多いので、そのような長期的管理が必要な小児矯正において1年半という期間は短すぎるのです。
インターネットで「インビザラインファースト」を強くお勧めしている歯科医院を検索してみてください。
ほとんどの歯科医院が、矯正専門ではなくむし歯治療やインプラント治療も行う一般歯科だと思います。
それは矯正歯科専門であれば従来通りの方法で確実に治療できる技術と経験があり、目新しい費用のかかる装置を選択する必要がないからです。
非常勤の先生が矯正治療を担当していたり、セミナーを受けてこれなら取り入れられそうとインビザラインファーストを口火に矯正治療を取り入れる先生が強くお勧めされている印象を受けています。
インビザラインの仕入れ値を下げるために、多くの歯科医院が頑張って症例数を増やそうと努力をされていますし、そのおかげで患者さんの支払う費用も安くしてくれています。
最終的な治療結果よりも、見えないことや取り外せる装置という治療過程にを強い希望がある方は、そのような先生の元で治療を受けられた方がいいと思っているので当院でもインビザラインファーストが治療の第一選択になることはまずありません。
歯並びが元々そこまで悪くないようなお子さんであれば、従来のような装置でも、インビザラインファーストでもほぼ確実に治ります。
インビザラインファーストをされる場合は、きちんとお話を聞き納得したうえで治療を受けていただけたらと思います。
将棋の藤井聡太さんが、茨木市に新しくできた「おにくる」に来られていました。
写真を拝見すると、藤井聡太さんも小臼歯と呼ばれる大人の歯を抜歯してワイヤー矯正をされていますね。
ここで重要なポイントがあります。
「子供からやれば歯を抜かずに済む」
「子供からやれば負担がなく日常生活に支障がない」
「みえない装置なら他の人にばれずに安心」
もし上記メリットが合理的なのであれば藤井聡太さんのような方であれば、そのような選択をされると思いませんか?
「大人になってから」
「歯を抜いて」
「見えるワイヤ-矯正」
を選択されているところからも、非常に合理的な判断をされる方だと感じました。
誰もかれもがインビザラインファーストのような治療が最適であるとは限りません。
場合によっては藤井聡太さんのような選択が合理的で良い選択であることもあるのです。
患者自身がインビザラインファーストで治療を行いたい場合、何件か矯正歯科に相談に行くとうちではインビザラインファーストじゃないほうが良いと思うと言われ、一般歯科に行くとインビザラインファーストでうちではしっかり治せますよと言われるケースがかなり多いと思います。
インビザラインを取り扱う先生のスキルはピンキリです。
「無知の知」という意識が全くないため起こっているトラブルによくよく遭遇します。
つまり、この症例がインビザラインファーストではうまくいかない理由があるから矯正歯科で否定していることにすら気づけないレベルの先生か、難しいことを踏まえた上で治療が可能と言い切れる高い技術をもった先生かに分かれます。特に矯正に携わったことのない一般歯科医がコンサルティング会社から経験不要の「新しいビジネスモデル」として提案され導入しているケースには特に注意が必要です。
矯正医が非常勤の雇われの先生の場合、その医院の院長の方針でインビザラインファーストの契約数を稼ぎたいから、どんな症例でもインビザラインファーストで説明せざるを得ないと言われる同業の矯正医の先生も沢山いらっしゃいます。こういった先生は、インビザラインファーストじゃないほうがよいとわかっていながらその医院で雇われている以上院長の方針に従わざるを得ないことがあるのです。
「矯正のことをあまりわかってない院長がインビザラインファーストで治療できるって言ってしまったから、インビザラインファーストでやらないといけない・・・」のような葛藤の中治療をしている先生も多いのです。
非常勤の先生を雇用する場合、一般的なむし歯治療ができる先生と、矯正専門の先生では給料が大きく異なります。
院長が矯正のことを理解しているのであれば、自分で矯正を行い、むし歯治療を非常勤の先生に任せた方が明らかに費用対効果が高いので、非常勤の矯正の先生など雇う必要がないわけです。
お子さんの生え変わりや歯並びのことなど、ご不安な点や、気になる点があれば一度ご相談ください。
みやの矯正・小児歯科クリニック
大阪府茨木市別院町4-15 別院町・掛谷第6ビル
みやの矯正・小児歯科クリニック(大阪・茨木)
院長宮野 純一Junichi Miyano